
『ふたりのマンガ線』発売までをふり返る記事を、年末から少しずつ書いてきました。いよいよラストです。
2026年1月23日、『ふたりのマンガ線』がフレーベル館より発売となりました!
2023年から始めた児童書の執筆。実は、作家デビューするまで髪を切らないという願掛けをしていました。
家族に「紫式部みたいになっちゃうかも」なんて泣きごとを言ったこともありましたが、なんとかみぞおちくらいの長さで一冊目の本を出すことができました(よかった〜)
最後まで楽しく読んでもらえる作品にするため、読書に慣れない子でも垣根が低い「マンガ」をモチーフにしました。
受賞後、選考に携わった方や編集者さんからアドバイスをいただくなかで、もう1つ目標ができました。
それは、しっかりと光るテーマがある物語にしたいということでした。
テーマのしっぽは見えていました。たぶん小学校の高学年くらいから、ずっと追いかけてきたもの。
――人と人が心を通わすというのはどういうことか。
――ひとりひとりが想像力をもって世界を見ることの大切さ。
わたし自身が小さいころ、内気な性格で苦労したり悲しい思いをしたりしたので、他者とのコミュニケーションへの興味が強いのだと思います。
大学時代に書いていた小説も、卒論も、3年前に初めて書いた児童文学も、今思うとすべて同じテーマでした。
これから書く小説も、きっと根っこの部分は変わらないでしょう。
『ふたりのマンガ線』では、教育虐待、格差社会、偏見によるカテゴライズからの排除、といった社会問題にふれていますが、その上で描きたかったのは、錬磨と秘のコミュニケーションによる相互理解の丁寧な過程です。
③の記事で書きましたが、執筆中はAqua Timezさんの『虹』をくり返し聴いていました。
サビの「大丈夫だよ」という優しく力強いフレーズは、わたしが『ふたりのマンガ線』を読んでくれた子どもたちに伝えたいメッセージでもありました。
そのことに気づいたのは、フレーベル館ものがたり新人賞の授賞式で、選考委員のお一人、高楼 方子先生のスピーチをお聞きしたときでした。
『ぼくたちのコミック・デイズ!』(改題前)を読んで、エーリッヒ・ケストナーの作品を思い出した、といったようなこと(はっきり記憶できていないのですが…)をおっしゃっていただき、ものすごくびっくりしたのです。
『飛ぶ教室』『点子ちゃんとアントン』『エーミール』『ふたりのロッテ』・・・ケストナー作品は、海外児童文学にハマったきっかけだったからです。
読まれたことのある方ならわかると思いますが、どの作品もケストナーの子どもたちへの温かなまなざしが、ベールのように全体を包み込んでいます。
こんなに優しい作家がいるんだ、と子ども心に驚いたのを覚えています。もちろんそれだけでなく、ストーリーも抜群に面白い! 近所の図書館で、夢中でページをめくりました。
高楼先生の言葉で、そういったケストナー作品にまつわる記憶が一気にあふれてきて、もうすぐ自分のスピーチなのにどうしようと困惑するくらいでした(笑)
同時に、なんだか根っこの部分を掘り起こしていただいたような、そんな心持ちになりました。
ふたりで描いてきたマンガをひとりで描くのは、正直言うとすっごくさみしい。
でも、だいじょうぶ。『正反対☆★ウォーズ‼︎』を描くなかで、おれと錬磨のあいだにも、たくさんのマンガ線を描くことができた気がするんだ。そのつながりは、はなれたってなくなったりしない。
『ふたりのマンガ線』P293
受賞してから、「どうして児童文学を?」ときかれることが何度かありました。
わたしは、人と人との深いつながりを物語にすることで希望を形にして、不安を抱えている子に「大丈夫だよ」と伝え続けたいです。
それが、錬磨くんと秘くんの言葉を借りれば、わたしなりの「マンガ線」を描くことにつながると思うからです。
そして、家族や先生など身近な大人だけでなく、本を書いたり作ったりする人のなかにも、遠くから応援している大人がたくさんいるんだよ、ということも伝えられたらいいなと思っています。
「『デコボコ』はそういうのが絶対になくて、どのマンガを読んでもハチャメチャで明るい。主人公はみんなちょっとバカっぽいんだけど、そこがおもしろくて。最初は情けない感じだった主人公が、戦ってるうちに強くなったり、かっこよく成長したりする」
錬磨は少し目を見開いて、うなずいた。
「わかるよ。ぼくも『デコボコ』の、能天気だけど一生懸命な世界観が好きだったから」
「やっぱり? それにさ、こんな雑誌を子どものためにつくってるおとなもいるんだなーって思ったら、なんか元気がわいてこない?」
「うん。そうだよね」
『ふたりのマンガ線』P78
この部分は、これまで読書によって何度も助けられてきた「読み手」としての思いから生まれた文章でしたが、今は「書き手」「作り手」としての思いも含んでいます。
フレーベル館ものがたり新人賞への応募、受賞、出版を通じて、多くの方々の力をお借りしながら『ふたりのマンガ線』が完成しました。
もの作りへの熱意、読み手となる子どもたちへの温かな想いを共有しながら、長丁場の作業を進められたことは、とても幸せなことだったと実感しています。
自信をもってお勧めできる一冊になりました。多くの方に読んでいただきたいので、書店や図書館で見かけた際はぜひ手に取ってみてください。
ルックバック企画はこれで終わりです。お読みいただいた方がいましたら、ありがとうございました!

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