【Look back】『ふたりのマンガ線』出版まで⑦ 改稿

第5回フレーベル館ものがたり新人賞の大賞受賞作、『ふたりのマンガ線』発売から3週間がたちました。
面白かったよ、ハラハラしたよ、涙が出たよ…など、温かい感想をいただく機会が多くほっとしています。

バタバタしていて止まってしまったルックバック企画ですが、マイペースに記録していけたらと思っています。

フレーベル館ものがたり新人賞の規定は、40字×30行で、20〜80枚です。わたしが構想したお話にとってはタイトな枚数でした。
そのため、応募作『ぼくたちのコミック・デイズ!』は、書きたいシーンを諦めたり、最後は改行を削ったりしながら、なんとかコンパクトにまとめました。

受賞連絡後のオンライン打ち合わせで、もっと増やしていいとおっしゃっていただいたのですが、やってみると、これが結構難しい。一度削ったものを元にもどすのは難しいと実感しました。

授賞式の翌日、編集者さんと改稿をもとに神保町の喫茶店で打ち合わせをしました(作家っぽいな…とこっそり感動しながら)
やりとりしながら、設定のほころびを修正する方法を考えたり、登場人物についての掘り下げをしたりしました。
わたしがあまり深く考えていなかった人物についても、「この人物はきっとこういう思いを抱えているはず」と一緒に考えてくださり、こういうふうに小説の世界をつくっていくのだと感動の連続でした。

そこから改稿を重ねていくのですが、編集者さんのプロの技術に支えられました。圧倒的な論理力で部分も全体も整合性をとりつつ、登場人物一人一人の心に寄りそって、情緒的な面も整えていきます。

何度もすごいなと感じたのが、考えが甘いところは鋭くつっこまれるのですが(笑)、わたしが心の奥底のほうまで降りていって書いたシーンは、どんなに突然あらわれても、全くつっこまれなかったことです。
高学年の子が読んでわかる文章に整えることと、楽しく読んでもらえるように創造すること、どちらも成立させるための塩梅。きっとわたしに言うこと・言わないことを、すばやく選びとりながら話されていたのだと思います。

それは、文章の細かな直しもです。「ここは自分の表現になっていないな」と思いながらも提出すると、確実に指摘が入ります。
そうして修正を重ねていくと、だんだん自分の文体がわからなくなってくるのですが、全体を読み直すとロボットが書いたようにはなっていなくて、ちゃんとわたしらしさも残っている。そのバランスもすごいと思いました。

それになにより、もう本当に優しい編集者さんで、何度一人で泣きそうになったかわかりません。
限られた時間の中で精一杯やっても、まだ粗が見えている…でも提出しないといけない。そんなときはどうしても落ち込みますが、必ず一回温かく受け止めてくださるので、また頑張ろうと思える。その繰り返しでした。

各シーンをふくらませたり、新たなエピソードを挿入したことで、最終的に1.5倍弱くらいの分量になりました。
結末も少し変わり、人物同士の関係性も児童文学としてふさわしいものに改善できました。
応募原稿をぱらぱら読み直すと、たくさん修正を加えたはずなのに、大枠や流れは全く変わっていません。でも、どの人物も応募作より生き生きして、それぞれに光るシーンがあり、思考と言動が自然になったと思います。

先日、プリントアウトした改稿原稿の山を選別し、必要ないものはシュレッダーにかけて処分しました。何度もオーバーヒートするくらい大量でした。
編集者さんに助けてもらいながらの数か月。『ふたりのマンガ線』を出版できるレベルにもっていけただけでなく、小説の根本的な考え方・書き方もたくさん教わりました。

わたしが不勉強なまま飛び込んだあまり、新入社員教育みたいになってしまって…。何度も申し訳なく思いましたが、今ふり返ると、すべての時間が楽しかったです。
一人で、どうなんだろう…? と思いながら書いた物語を、届ける意味のあるものとなるように、一緒に頭を悩ませてくれる人がいる。原稿がどんどん良くなっていく感触もある。こんなに幸せで楽しいことは、なかなかないと思います。

改稿中、『児童文学塾』という本と出会いました。

日本児童文芸家協会さんによる、児童文学作家を目指す人に向けた指南書です。雑誌に載った記事をまとめた本なので、たくさんの作家さんが寄稿されています。

『ふたりのマンガ線』の結末を再考するにあたり、「児童文学とはなにか」という壁にぶつかりました。
児童文学において、シビアな現実をどこまで残すべきか。すべて丸く収まって全員が良い人になるのが、今の子たちにとってリアルに映るのかどうか。わかりませんでした。

『児童文学塾』はその点で参考になる言葉がたくさんあり(P16の高橋うらら先生、P34の横山充男先生など)、わたしなりの答えを見つけることができました。

また、フレーベル館ものがたり新人賞の選考委員のお一人、山本省三先生の言葉も参考になりました。

・・・子どもにぴったりと寄りそっていることです。上から見たり、物を言ったりするのでなく、主人公自身の気持ちになって、考え、行動する様子がしっかり表現されています。
 それには書くときに子どもになりきることが必要といえましょう。大人になってから子どもの時の感情を、年月というフィルターを通さずに、よみがえらせることができるかが鍵になる気がします。(P66)

実は、主人公の一人・錬磨の父親の人物像について最後まで迷いがあって、なかなか良いお父さんにできず四苦八苦していました…(苦笑)
そのとき、山本先生の「上から見ない」「主人公自身の気持ちになる」という言葉が大きなヒントになり、ようやく納得のいく人物として書き上げることができました。

読んでくださった方ならわかってもらえると思いますが、あのシーンとあのシーンを書き上げたときが、改稿を通して一番ほっとした瞬間でした。

『児童文学塾』には、他にも入賞するための工夫や企画書の書き方など、さまざまな情報が載っていて本当に“塾”という感じ。おすすめの一冊です。

⑧に続きます。ゲラチェックや装丁のことを書きたいです。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてください。
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次